――戦場は、すでに動き出している。情報戦の主導権はどちらの手に
第865話「戦場は動き出す」では、秦・趙両軍が再び正面から向き合う局面が描かれました。
一見すると、兵力・布陣ともに拮抗しているように見えますが、今回の戦いを読み解く上で見落としてはならないのが、王翦軍と司馬尚軍の「情報量の差」、そしてその立場の逆転です。
本記事では、前回の番吾の戦いを振り返りつつ、今回の戦いが持つ意味、そして第866話で描かれるであろう展開を考察していきます。
番吾の戦いにおける非対称性
――「知っている側」と「知らない側」
まず押さえておきたいのが、番吾の戦いにおける前提条件です。
あの戦いでは、趙軍側から見て王翦は「何度も刃を交えた既知の相手」でした。
王翦本人はもちろん、亜光をはじめとする主要武将の戦い方、指揮の癖、陣形運用まで、李牧と趙軍首脳陣には十分すぎるほどのデータが蓄積されていました。
つまり趙軍は、
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王翦軍の戦術傾向
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武将個々の強みと限界
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これまでの戦闘で露呈した弱点
これらを把握した上で、司馬尚軍をぶつけることができたのです。
一方で、王翦軍側はどうだったでしょうか。
司馬尚軍は、ほぼ未知の存在でした。
戦闘スタイル、部隊運用、武将の練度、そして何より「司馬尚という将の性質」。
そのほとんどを把握しないまま、正面衝突に踏み切った結果が、王翦軍の壊滅です。
率直に言えば、これは王翦軍側の情報不足、もっと言えば「事前リサーチ不足」による敗北でもありました。
そして、今回は立場が逆転している
しかし今回の戦いでは、その前提条件が大きく変わっています。
番吾で一度全滅した王翦軍は、
勢力も、武将構成も、すべてを更新した状態で戦場に戻ってきました。
これは単なる「復活」ではありません。
王翦は、敗北によって得た戦闘データをもとに、軍を再構築しているはずです。
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司馬尚軍の主力部隊の動き
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各武将の役割分担
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攻勢時・防勢時の癖
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想定外が起きた際の修正能力
これらを冷静に検証し、
「どの戦術が有効で、どこが脆いのか」
を洗い出す時間が、王翦には十分にありました。
つまり今回、**司馬尚軍は「研究される側」**に回っているのです。
情報戦における王翦の本領
王翦という将は、力押しの武将ではありません。
彼の真価は、徹底した合理性と準備にあります。
相手を知り、
戦場の条件を整え、
勝てる状況を作ってから動く。
番吾では、その前提が崩れた。
だからこそ敗れた。
しかし今回は違います。
司馬尚軍の戦闘データが存在し、
分析の時間もあり、
王翦軍そのものも「対司馬尚仕様」に再編されている。
第866話では、
司馬尚軍が「前回と同じ感覚」で動いた瞬間に、
想定外の無効化に直面する可能性が高いでしょう。
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通用するはずの正面突破が止められる
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機動戦が封じられる
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想定していなかった方向からの圧力を受ける
そうした違和感が、戦場に生じ始めるのではないでしょうか。
李牧は、当然そこまで読んでいる……はず?
さて、ここで重要なのが趙軍総司令官・李牧の存在です。
当然ながら、
「王翦が何の準備もせずに再戦に臨む」などということは、李牧ほどの軍師が想定しないはずです。
普通に考えれば、
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王翦軍の再編内容
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新たに加わった武将
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編成の変化から見える意図
これらを事前に探り、
対策を講じていて然るべきです。
……ですよね?
でも、李牧さん、毎回こう言いません?
ここで、李牧さんの実態に基づいて検証してみたいと思います。
李牧という人物、これまでの戦いを振り返ると、
要所要所でこんな発言をしてきました。
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「相手の実力が想像以上でした」
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「まだそんな隠し玉があったとは……」
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「ここまで準備されているとは」
これ、冷静に考えると、
軍師としては、なかなかの頻度で想定外を食らっているとも言えます。
もちろん、それだけ秦側の将が優秀だという見方もできます。
しかし同時に、「相手の準備を完全には読み切れていない」場面が多いのも事実です。
今回もまた、第866話で、
「まさか、ここまで司馬尚軍の動きを分析していたとは……」
などというセリフが飛び出しても、
正直、驚きはありません。
第866話の見どころ予想
以上を踏まえると、第866話では、
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王翦軍が主導権を握る兆し
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司馬尚軍に生じる初めての違和感
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李牧の表情が一瞬曇る描写
このあたりが描かれる可能性が高いと考えます。
全面衝突ではなく、
まずは「通用しない」「想定と違う」という感覚が、
趙軍側に広がり始める。
その静かなズレこそが、
今回の戦いの本当の始まりになるのではないでしょうか。
――司馬尚という将の「純粋さ」が、最大の弱点になる時
前回までの考察では、
王翦軍と司馬尚軍の立場が「情報戦」という観点で逆転している点を中心に見てきました。
ここからはさらに踏み込み、司馬尚という将そのものの性格と、
李牧との関係性に焦点を当てて、第866話の展開を予想していきます。
司馬尚は「考えない将」ではない
――「信じすぎる将」である
司馬尚という人物は、誤解されやすい将です。
彼は決して愚鈍ではありません。
また、自分の強さを理解していないわけでもありません。
むしろ司馬尚は、
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自分の肉体的強みを正確に理解している
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小細工を弄する必要がないことも理解している
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正面からぶつかれば勝てる、という成功体験を積み重ねてきた
非常に「素直で真っ直ぐ」な将です。
問題は、その素直さが、
李牧という軍師の存在と結びついた時に、致命的な弱点へ変わる点にあります。
李牧と司馬尚の関係性
――妖精とトロールの危うい共存関係
李牧と司馬尚の関係を例えるなら、
まさに「妖精とトロール」の関係でしょう。
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李牧は、知恵と情報を司る存在
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司馬尚は、圧倒的なフィジカルを持つ存在
この役割分担自体は、理想的に見えます。
しかし、その実態は、
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考えるのは李牧
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判断するのも李牧
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司馬尚は「信じて動く」だけ
という、極端な依存構造になっています。
司馬尚は、李牧の指示を疑いません。
間違っていても、ズレていても、
「李牧が言うなら、そうなのだろう」と受け入れてしまう。
これは美徳でもありますが、
戦場では時に致命傷になります。
司馬尚の戦法は一つしか存在しない
司馬尚の戦闘スタイルは、極めて単純です。
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推定身長3メートル級の巨体
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圧倒的な膂力
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正面からの強突撃
これがすべてです。
裏を返せば、
この戦法以外を選択した瞬間、司馬尚は自分の強みを捨てることになります。
司馬尚自身も、それを理解しています。
だからこそ彼は、迷わず突撃する。
しかしここに、王翦が突くべき「一点」が存在します。
カン・サロという「思考装置」
司馬尚軍が、これまで無敗でいられた理由の一つが、
副官・カン・サロの存在です。
カン・サロは、
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戦場の状況判断
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微調整
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司馬尚の動きの補正
を担う、実質的な「思考補助装置」と言える存在です。
司馬尚が「突撃」という最適解を選び続けられたのは、
カン・サロがその前提条件を整えてきたからです。
つまり、
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司馬尚軍=司馬尚+カン・サロ
というセットが成立している間は、非常に強い。
王翦が狙うのは「撃破」ではなく「分断」
ここで王翦の視点に立ってみましょう。
王翦は、
司馬尚を正面から討ち取ろうとはしないはずです。
なぜなら、
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巨体
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膂力
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正面戦闘能力
このすべてにおいて、
司馬尚は「正面から倒す対象」ではありません。
王翦が狙うのは、
司馬尚軍とカン・サロ軍を引き離すことです。
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地形
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陣形操作
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偽装退却
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釣り出し
あらゆる手段を使い、
「司馬尚単体」を戦場に晒す。
司馬尚、孤立した瞬間の思考停止
もしそれが成功した場合、
司馬尚の頭の中は、こうなります。
「あれ?
近くにカン・サロがいないな……?
俺、次は何をすればよかったんだっけ?」
そして、思い出すのはただ一つ。
「あ、そうだ。
李牧が、とりあえず突撃しろって言ってたな」
結果、
「よし。
とりあえず、頑張ろう」
この瞬間、司馬尚は
戦術的判断を放棄した、巨大な的になります。
なぜ司馬尚は、自分の弱点に気づけないのか
ここで重要なのが、
司馬尚が「弱点を分析してこなかった理由」です。
それは単純です。
負けたことがないから。
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自分の突撃は常に通用してきた
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李牧の指示も常に正しかった
-
カン・サロも常に側にいた
この成功体験が積み重なった結果、
「もし切り離されたらどうなるか」
「もし指示が間違っていたらどうするか」
という思考が、一切育たなかった。
これは司馬尚個人の怠慢ではありません。
構造の問題です。
李牧の最大の過失は「信頼しすぎた」こと
ここで、話は再び李牧に戻ります。
李牧は、司馬尚を信頼しています。
それ自体は悪いことではありません。
しかし李牧は、
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司馬尚が自律的に戦える
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指示が多少ズレても修正できる
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想定外にも対応できる
という前提を、
無意識のうちに置いている可能性があります。
これは、司馬尚という将の性格を
過大評価しているとも言えます。
第866話で起きるのは「戦術崩壊の予兆」
第866話では、
司馬尚が敗れるとは限りません。
しかし、
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動きが単調になる
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突撃が読まれる
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王翦軍の誘導に乗る
といった「綻び」が、確実に描かれるはずです。
その時、李牧が、
「……司馬尚、想定よりも誘導されているな」
と気づけるか。
あるいは、
「まさか、ここまで対策されているとは……」
と、いつもの言葉を口にするのか。
そこが、今回の戦いの分岐点になります。
おわりに
――司馬尚は悪くない、でも勝てない時は来る
司馬尚は、強い将です。
疑いようもなく、怪物です。
ただしそれは、
「正しい使い方」をされている間に限られます。
李牧という妖精が、
少しでも間違った方向を指した瞬間、
トロールは迷わず、そちらへ突進する。
第866話、
その危うい関係性が、
ついに戦場で可視化されるのではないでしょうか。
そしてまた、戦いの後で――
「相手の実力が、想像以上でした」
という言葉が聞こえてきたとしたら。
それはもう、司馬尚ではなく、李牧自身の敗北なのかもしれません。
――秘密兵器、昂クン投入という最悪の想定
ここまで真面目に戦術や構造の話をしてきましたが、最後に一つだけ、趙軍にとって最悪の展開を予想させてください。
それは、もしも王翦軍に、秘密兵器・昂クンが投入されたらどうなるのか、という話です。
司馬尚さんの弱点。
それは、性格でも、戦術でもなく――膝です。
推定身長3メートルを超える巨体を支える膝関節には、常人とは比較にならない負荷がかかっています。
これは現実世界の格闘技でも同じで、超高身長・重量級の選手ほど、膝や腰を壊しやすく、結果として選手寿命が極端に短くなるケースが珍しくありません。
つまり、司馬尚さんは「強突撃」という一点特化の代償として、構造的に膝が脆い可能性を常に抱えているわけです。
そこに現れるのが、昂クン。
小柄な体躯。
意味不明な余裕の表情。
そして、超常的なチンポフィジカルとその使用技術。
昂クンが司馬尚さんを見上げながら、こう言います。
「……あ、でっか。でも、脚の負担きつそうっすねww」
次の瞬間、超圧縮された精液弾が、司馬尚さんの膝関節にピンポイントで炸裂。

――バキィ。
司馬尚さん、崩れ落ちます。
立ち上がろうにも、立てません。
何しろ身長3メートル超。
仲間が支えて撤退、という選択肢すら存在しません。
周囲の趙兵が思います。
「え……守れない……」
「ていうか、重すぎる……」
李牧さんも、遠くから静かに一言。
「……これは、想定以上ですね」
なお、この展開が本編で描かれる可能性は、
限りなく低く、92%ぐらいしかありませんが…、、
でももし、万が一、
昂クンが戦場に立ったら。
司馬尚さんは、
最強の将ではなく――
ただの巨大な座標物になるかもしれません。
以上。