( 桓騎と嬴政 作画引用:原泰久先生 作 キングダム第698話)
大王嬴政が戦場に到着して、なんとなく議論の体でお話会いが始まった前回698話。
話のレベルとか内容は、どっちもどっちというか、話が嚙み合っていません。
しかし、勝負という点で言えば、はっきり言って、内容的には全てにおいて完全に嬴政の負けです。
嬴政が副将の摩論相手に、一応の論破(?)を果たしたので、一見、大王側優勢に見えたこの戦地尋問。
桓騎がまともに口を開いたと思った瞬間、再度、侵略戦争そのものの是非が問われる顛末になっています。。
議論の内容のどっちが優勢とかじゃなくて、そもそも大王である嬴政が、本来は手下でしかない桓騎を御しきれていおらず、同じテーブルに座るような状態になっている時点で負けです。
もともと桓騎自身も議論をすることが仕事の人間じゃなだけに、桓騎に好き放題言わせてしまっている時点で、桓騎側には一本とは言えずとも有効から技ありな試合内容になっています。
もちろん政一人が悪いわけではない。
いろいろ頑張ろうよ秦国本営。
キングダムネタバレ-本作で取るべき嬴政の態度
ぶっちゃけ前回の考察編の繰り返しになりますが…、
今回の会談。
現在判明している秦国の軍律規定に照らし合わせても、流れによっては摩論一人の弁明で切り抜け可能でした。
嬴政も最初に軍律の話で切り出している以上、一応は“法治国家”の君主らしく、少なくとも軍法に照らし出しながら、正当に桓騎を糾弾していこうとしていた様子が伺えます。
しかしながら、この会談の取っ掛かりの時点で、嬴政側としては非常に大きなミスを犯していることに気が付いていないのが嘆かわしいです。
最初から軍律、すなわち法律に即しての尋問をするつもりであるなら、何故、その専門家を尋問に起用しなかったのか?
言い換えれば、最初から李斯でも連れていけば良かったのです。
大王にしたって、そこは優れたリーダーであるには違いませんが、こと法律に照らして相手を糾弾したいのであれば、そこは専門の部下に任すべきでしょう。
キングダム作中では少なくとも、法治国家を宣言している秦国です。
今回の698話で“理由なく捕虜を殺すことを禁止する”と大王嬴政から明確に宣言された軍律が紹介されました。
同時に、軍律の対象としても大将軍までが拘束されることが明言されています。
したがって、嬴政がこの法律を宣言して、桓騎を処罰しようとする以上、この法律に対して今回の事案要件が、法律上、処罰に向けて合致するかどうかが嬴政側にとって重要になってきました。
この点、どうやら大王自身は、六大将軍に欠損が出てもいいので、既に桓騎を始末する覚悟は出来ていたようです。
嬴政自身が桓騎に弁明の機会を与えたにも拘らず、桓騎がふざけてまともな回答をしなかったからです。
即座に嬴政は『桓騎の首をはねろ』と側近の豹司牙に命令しましたが、嬴政の面目が立ったのはここまでです…。
黒桜が豹司牙の前に立ちふさがり、処刑を妨害してきますが、豹司牙はコレも彼女の剣を切断し、首をはねる寸前まで行動します。
この時、摩論が桓騎と大王の間に割って入る形で、『待ってください。』と制止に入るのですが、この瞬間の判断で大王嬴政が処刑を貫徹しなかった点でケチが着きました。
ぶっちゃけ、史実では桓騎は李牧に始末されるまで生き残るので、この場で死ぬわけはないのですが…。
最早、問題はそこではありません。大王である嬴政が、一度宣言した死刑を翻すなど本来はあってはならないからです。
ましてや、一軍の総大将である桓騎が、もはや扈輒と同じように、弁明という責任も放棄していることが分かります。
豹司牙にしても本来は、嬴政以外の人間以外のいう事を聞く必要はありません。
黒桜の剣を叩き折って剣を止める技量は凄まじいですが、“誰の言う事こと聞いてんだよ?”って話です。
一応、豹司牙としても『あれ?何か雰囲気的に、一応は大王様に死刑続けてもいいか聞いたほうがいいかな?』と思ったのでしょう。
本来であれば嬴政としても、豹司牙がこんな調子なら、ここはやはり『豹司牙、誰が止めよと言った。』と、圧を加えて刑の執行を優先するべきでした。
そうなれば、両軍とも合戦になり、なによりも史実とは違う結果になるので、タダの困った状況にしかならないし、なり様がないのですが、今回の本作の流れは、いろんな意味で質の悪い展開になってしまいました。
まず、嬴政も桓騎も二人とも“男の格”下げました。
嬴政は桓騎のさらに格下でしかない摩論如きの介入で、王命を撤回させられました。
“大王命令”と“大将軍死刑”ってそんなに軽いものか?
次に、桓騎も大悪党気取っていますが、これではタダ、摩論に命を救ってもらっただけの人です。
何もしてません。
正直、キングダム698話は摩論が主役です。
もう、桓騎軍じゃなくて摩論軍でいいんじゃないか??
桓騎も扈輒と同じになっているぞ。
しつこいようだけど、扈輒に勝った作戦自体も、別に孫ピンの話の内容と全然関係無かったし。
キングダムネタバレ-摩論一人での論破が可能な事案。
上記のとおり、今回の話で一番株を上げることになったのは、摩論です。
本来、神(作者)様が主役にしたく、読者の注目しているハズの中心人物である嬴政も桓騎も、むしろ人物としての格を下げました。
嬴政も大王でありながら、一度自分が発した『桓騎の首をはねろ』を黙示撤回させられた結果、自身の言葉の重みもロストさせ、完全にその場の主導権を相手に渡してしまった結果になります。
何のための死刑執行の命令であり、何のため大王の権威であり、何のための出陣の準備であったのか…。
これでも前回の考察編の内容を踏襲する形になるのですが、ここで桓騎サイドにとって幸運だったのは、冒頭のとおり、大王が軍律の話を持ち出したので、摩論もまた、実情の話を持ち出したころで、軍律上、桓騎軍の捕虜殺害を不可抗力論で無実化しようとしていた点です。
改めて、嬴政の語る軍律を反芻すると、“理由なく捕虜を殺すことを禁止する”とあるので、結局は理由次第で、何も問題が無くなる軍律であることが分かります。
そして、作品上、摩論はその理由を状況に応じて説明しきっていますし、その後に『戦力差が埋まれば殺すな。』との反論に出た嬴政の言葉も、開戦から8万対24万であた戦力差である上に…
終盤時点で2万弱しかなかった桓騎軍に対しての捕虜数万って、どのように算数しても、戦力差が埋まらなかったので、摩論の弁明は猶更のこと見事な説明であったと考えることが出来ます。
大王は『皆殺しにする必要が本当にあったのか!?』『戦力差が埋まればそこで止めれたはずだ。』とマジレスしていますが、このように聞かれてしまえば、摩論軍(桓騎軍)も読者一同も以下のようにお答えするしかありません。
※以下、算数ができる人全員の答え方
『はい!皆殺しにする必要が本当にありました。』
『理由は、皆殺しにしても戦力差が全く埋まらなかったからです。』
※以下、卒業式風に。
リン玉『僕たちー、』
黒桜 『私たちはー、』
摩論 『間違ったことをー、』
桓騎軍全員『言っていますかーーーー!?』
摩論も、もう少し勇気を出せば、ここまでの反論が可能でした。
なので、こうして完全に論破された後となれば、大王陣営としてお、法治国家としての処断でも何でも何でもなくなってしまいます。
再び大王が桓騎死刑の続行を望んだとしても、冒頭のそれとは全く意味の違った状況になるからです。
そもそも論、埋まりもしない戦力差問題を自ら議論の前提に持ち込んだ時点で嬴政の論争は詰みでした。
しかし、嬴政としてもまだ議論に勝つ可能性が無かった訳でもありませんでした。
法律処断の専門家として、もしも李斯を連れて来ていれば、最初からこんなマズい話し合いを嬴政にさせなかった事かと思われます。
しかしどうなんでしょう?
本作をみていると、李斯も李斯で桓騎の六将就任の懸念を示していたのですが、どうやら彼は、六将将軍制度の実務運用化に関して、何もタッチさせてもらっていない可能性が高いです。
折角、大王陣営に登用されているのに、これはもったい無いです。
史実的にいっても、法治国家である秦国の陣営を根本から支えていたのは、大王嬴政の統率力もさることながら、李斯たち法家による法律運用の実務面が見落とせないハズです。
分析するに、今回、大王嬴政の話が、現場で戦っている摩論や桓騎と全く話が嚙み合わないのは、法治国家とか言っている割には、嬴政は“抽象的な理想とか願い”で中華統一しようとしているのに対して…、桓騎側(実際は摩論)は単に現場の実情を訴えているだけの話だからです。
であれば、上記のように、大王陣営の理想とそれを実現するための六大将軍制度の設計とその具体的な運用方法の確立と、秦国の軍事法体系の再編集がこそが、一番最初にやらなければならない仕事だったことが分かります。
上述するように、本作ではまるで桓騎軍が暴走して、捕虜虐殺という問題を起こした話になっていて、“暴走する桓騎”VS“理想を掲げる秦王”みたいな公図になっていますが、本質的には違うと考えます。
秦国側のリソース不足と、大王陣営がまだ法治国家制度として未熟だったという話でしょう。
キングダムネタバレ-二人の議論の顛末
桓騎が嬴政に逆らうのは分かっていた。
それが楽しみであったファンも多く、私もその一人だったが、少なくとも698話の最後を見る限り、期待していたその桓騎の姿をみていても…?
何故か、まったくカッコさを感じないのは何故でしょう?
寧ろ、黒羊戦で信に言っていたように、『俺より悪い奴らはお前(お前ら)だ!』と言っている子供の様です。
あとさ?
桓騎『今、この世の中で一番人を殺してきているのはお前だぞ秦王。』
これ、異音同義で似たような話、もうキングダムで何度も同じようなシーン繰り返してきてるんよ。
それこそ王都奪還編で楊端和味方に引き入れるときからやってるやん。
そして、国内に向けては呂不韋との国家統一選挙(??)やったときと、国外に向けては王建王に法治国家論を宣言したことで、一定のゴール設定が出来た訳だけど。
今更、それを桓騎を相手に一から語って聞かせる訳なのか?
桓騎が侵略の是非を問い返してきていますが、これは少し考えどころです。
しかし、冷静に考えれば、別にこれも本来は嬴政にとっては何も難し話ではありません。
嬴政『ハハハハハ! それをお前が思い悩む必要は無い。』とでも、鼻で笑ってやればいいだけだからです。
立場上は、最初から大人と子供くらいの違いがあるのですから。
しかし、その反面で、すこし興味深い部分もあります。
この点、桓騎に中華統一の目的を話すのは、楊端和や呂不韋、それこそ王建王といった、少なくとも嬴政と為政者という立場を同じくする者に対して話すのとまったく違った切り口が必要であるという点です。
冒頭から長々と、今回のお話がどこかロジカルではなく、二人ともなんか話が嚙み合っていない点を指摘してきたのは理由があります。
神(作者)様の意図として、史実として、桓騎を処分する訳にもいかず、かといって桓騎をこのままタダの悪党として終わらす心算ではない点を明確化したかったからです。
この点から桓騎という男を分析すると…、
いまの精神状態の桓騎って、キングダム連載スタートの少年信と殆ど同じじゃないですかね??
ココからの会談で『俺たち底辺の人間には、王様が誰だなんて興味はねーんだよ!』とか普通に言い出しそうじゃないですか??
雷土自身も死ぬ直前に、何か桓騎の考えていることに気が付き始めていた訳ですが、桓騎って多分ですよ?
悪党共の居場所作りみたいな感じで、秦国武将としての自分の存在価値と認識しているような気がするのは私だけでしょうか?
しかもその中で、自身が単に死ぬとか生き残るのは、桓騎にとって問題外なのだと思います。
野盗の才能まま鎮圧しにきた秦軍に勝って、将軍になれた訳ですが、そのどこかの経歴の中で、家族や恋人が秦軍に殺されていたのか?(またまた桓騎も亡国の王族だったのか?)理由はさて置き。
残虐行為で戦で勝利を重ねる理由も、言語化すると"悪党らしい悪党であることを誇示すること自体が目的"と言えませんかね。
まるで、クラスの劣等生が承認欲求混ざりで、わざと奇行を見せて注目を浴びたがるように。
ここまで状況を落とし込むと、なんか桓騎を篭絡するの別にそう難しくなさそうじゃないですかね?
嬴政が大人になって、桓騎を包み込んでやればいいだけです。
嬴政『その通りじゃ。そうか…。そこまで分かっているなら話は早い。そして、もう分かった。気づいてやるのが遅くて悪かったな、桓騎。お前、いままでずっと何か傷ついてたんやな。』
桓騎『…(ピクッ!?)』
そして重ねて…、
嬴政『早い話、自分達が不幸やったちゅーことを、誰かに分かって貰いたかっただけやろが?』
桓騎『…(イッラァッ!?)』
嬴政『まァ、落ち着けよ? お前の言う通り、ワシが一番の大悪党じゃ。この中華の悪の役割は、全てワシが一手に引き受けるよってに、お前はもう楽になれや?』
という感じで、自分こそが善も悪も超越したザ☆大王ってトコロを見せてつけて、桓騎にショックを与えてやれば全て解決します。
そして―、
もしそうなれば、後は桓騎個人の内面の問題です。
来週のキングダムの後半部分については、あとはエヴァンゲ○オンの最終話オマージュで仕上げとけば、全て無難に解決することが可能だと思います。
※以下、適用事例参照。
桓騎『ヤクワリ? コレが俺の望んだ? でも…、悪党で無くなった俺に“価値”なんか無い。』
…タタタタタタッ(パンを加え走ってくる雷土)
雷土『やっばーい、遅刻遅刻遅刻~。』
桓騎と雷土 ドッシーン!!
そして教室で…、
リン玉先生『えー、転校生を紹介する。』
桓騎と雷土『あああ~!』
リン玉先生『ん?なんだお前ら知り合いか?』
…、
……。
桓騎『そうだ、これもひとつの世界。僕の中の可能性。今の俺が俺そのものではない。色んな俺自身がありえるんだ。そうだ・・・、秦国の残虐武将ではない俺もありえるんだ』
雷土「そう思えば、この現実世界も決して悪いもんじゃないぜ。」
桓騎『現実世界は悪くないかもしれない。でも自分は嫌いだ。』
黒桜「"現実"を、悪く嫌だととらえているのは、お頭の心だ。」
リン玉「"現実"を真実に置き換えているもの、お頭の心さ。」
白老「フォフォフォ。現実を見る角度、置き換える場所、これらが少し違うだけで心の中は大きく変わい。」
王翦「"真実"は人の数だけ存在する」
オギコ(キリっとした顔で)「だが、お頭の"真実"はひとつだ。狭量な世界観で作られ、自分を守る為に変更された情報。・・・歪められた"真実"さ。」
ゼノウ「ヴァ、ヒドガヒドリデ、モデルゼガイナンデ、ヂッボケナモンダ(ま、人一人がもてる世界観なんて、ちっぽけなもんだ)」
朱摩「だけど、人はその自分の小さな物差しでしか、物事を測れなーからな。」
摩論「人は与えられた他人の真実でしか、物事を見ようとはしませんからね。」
信「晴れの日は気分良く、」
羌瘣「雨の日は、憂鬱、」
那貴「と、教えられたら、そう思い込んでしまう。」
オギコ「雨の日だって、楽しい事はあるのに。」
嬴政「受け取り方ひとつで、まるで別物になってしまう脆弱なものだ。人の中の"真実"とはな。」
張唐「人間の真実なんてその程度のものだ。
だからこそ、より深い真実を知りたくなるものじゃ。」
王翦「桓騎よ? ただ、お前は人に好かれる事に慣れていないだけだ。」
雷土「だからそうやって、人の顔色ばかりを伺う必要なんてないんだぜ?」
桓騎『でも、皆、俺が嫌いじゃないのかな・・・?』
黒桜「あんたバカァ?あんたがひとりで、そう思い込んでるだっけじゃないの!」(これは黒桜に言わせてやりたい。)
桓騎『でも、俺は俺が嫌いなんだ。』
嬴政「自分が嫌いな者は、他人を好きに、信頼するようにはなれないぞ。」
桓騎『俺は卑怯で、臆病で、ズルくて、弱虫で・・・・・』
白老「"自分"が分かれば、優しくできるじゃろう・・・・?」
桓騎『俺は、俺が嫌いだ…、 でも、好きになれるかもしれない。』
―パシ―(少しヒビが入る音)
俺はここにいてもいいのかもしれない。
―ピシ―(ヒビが入る音)
そうだ、俺は俺でしかない。
―パキン―(さらにヒビが入る音)
俺は俺だ。俺でいたい。
―ビキン―(大きくヒビが入る音)
俺はここにいたい。
―ガシャ~ン―(ガラスが割れる音)
桓騎『俺はここにいてもいいんだ!!』
―バシュゥゥゥウウ・・・・(ガラスが崩れ落ちる音)
ウワアアアアアアアア!!!!(斬首された数万人と今まで桓騎に殺された人たち全員の大歓声)
雷土「おめでとう!」
黒桜「おめでとう!」
リン玉「おめでとう!」
摩論「おめでとうございます。」
オギコ「お頭~、おめでとう♡」
ゼノウ「オメデドブ!」
朱摩「フッ、めでてェなぁ」
白老「フォフォ、おめでとう。」
王翦「おめでとう。」
張唐「おめでとう」
那貴「おめでとう」
信「おめでとう」
羌瘣「おめでとう」
嬴政「おめでとう!」
桓騎『ありがとう』
大王に、ありがとう。
そして、全ての虐殺の被害者にさようなら…。
桓騎『ご迷惑をおかけしいたしました。』
…。
来週の予想、真面目に考えるのがしんどいからって…、いったい俺は、何を書いていたんだ??
― キングダムネタバレ最新699話 以上 ―
次回もこの先の展開について、キングダムネタバレ予想をすすめていきたいと思います。
皆さんの予想やコメントもいただけると嬉しいです。どうぞお気軽に。