キングダム第891話「守られるべきもの」内容ネタバレ
前回、中央から派遣されてきた将軍に斬りかかり、牢に入れられてしまったカイネ。
そんなカイネのもとを訪れた馬風慈は、父親から聞かされた話を伝えます。
どうやら、カイネが斬首されることはないようです。
しかし、普通であれば、中央から派遣された将軍に斬りかかっておきながら、投獄だけで済むはずがありません。
馬風慈の父親も、今回の件については李牧さんに感謝するようにと言っていたのでした。
ところが、牢の中で項垂れていたカイネは、そんな話を聞いても納得できません。
カイネの脳裏に焼き付いていたのは、あの匈奴たちの姿でした。
「あいつら、笑ってた……」
自分の父と母、そしてカイヤを侮辱しながら、笑っていた匈奴たち。
それなのに、自分は何もできませんでした。
カイネは、父たちの墓の前で誓っていたのです。
目の前に現れた匈奴は、一人残らず殺してやると。
しかし、実際に仇である匈奴を目の前にしても、何一つできませんでした。
あいつらは笑っていたのに。
家族を侮辱して笑っていたのに、自分は何もできなかった。
そう言って悔し涙を流すカイネに対し、馬風慈たちも、かける言葉が見つかりませんでした。
匈奴の襲撃を受け続ける雁門と、李牧さんの防衛戦略
それからも雁門は、幾度となく匈奴の襲撃を受けていました。
しかし、以前とは大きく状況が変わっていました。
まるで匈奴の襲撃を事前に察知していたかのように、集落の住民たちは、敵が到着する前に砦へと避難していたのです。
そのため、匈奴による襲撃が繰り返されても、雁門の被害は最小限に抑えられていました。
しかも、匈奴との間に、戦いらしい戦いすら起きません。
住民たちにとっては、これほどありがたい話もありませんでした。
しかし、家族の仇を討ちたいカイネにとっては、まったく別の話です。
戦闘が起きなければ、匈奴への恨みを晴らす機会も訪れません。
カイネは、自分の感情を必死に押さえつけるように、苦しげに顔を顰めていました。
そして李牧さんは、そんなカイネの姿を、じっと見つめていたのでした。
雁門の宴会で明らかになった李牧さんの功績
そんなある日、雁門で宴会が開かれることになりました。
宴の席で、北守が住民たちに向かって声を上げます。
皆の者、よく聞け!
今年の羊の数を集計したところ、なんと、この三十年間で最多となったのです。
しかも、単なる最多ではありません。
圧倒的な最多記録でした。
その理由は、今年、匈奴に羊を一匹も奪われなかったからです。
そして、それを実現したのは、若き雁門総司令、李牧将軍のおかげである!
北守がそう宣言すると、宴会に集まっていた住民たちは笑い出します。
そんなことは、みんな分かっている!
北守様、もう酔っ払っているじゃないか!
そんな住民たちの反応にも構わず、北守はさらに言葉を続けました。
しかも、その目には涙が浮かんでいます。
李牧さんが雁門に赴任して以来、自分たちは誰一人として仲間を失っていない。
家族を失った者も、一人もいないのです。
一人もです。
これまで幾度となく匈奴に襲われ、大切な家族や仲間を奪われてきた雁門の住民たち。
そんな雁門に、誰一人として犠牲者を出さない日々が訪れるなど、いったい誰が想像できたでしょうか。
北守は、ついに感極まって叫びます。
「奇跡じゃ! 奇跡じゃあ!」
そして、李牧さんへの感謝を叫びながら、本人に抱きついてしまいました。
そんな北守の姿を見て、宴会場は住民たちの大笑いに包まれます。
一方、宴会場の片隅では、静かに酒を飲んでいた者たちが、現在の雁門の状況について語り合っていました。
こうして安心して酒を楽しめるのも、李牧さんが赴任してから、匈奴による被害が抑えられているからです。
そのことは、誰もが認めていました。
それでは、李牧さんは、いったい何をしてきたのでしょうか。
住民たちが、その功績について語り合っていると、一人の男がしみじみと口を開きます。
これまで、匈奴が何も奪えずに帰っていく姿を見たことがあるか?
あの匈奴たちが、まるで戦争に負けたかのように、うなだれて帰っていくのです。
これこそが勝利ではないか。
雁門の勝利なのだと。
ところが、その言葉に真っ向から反発する者がいました。
カイネです。
カイネが宴会で激怒! これのどこが勝利なのか!?
「どこが勝利だ!」
突然、カイネが大声を上げたことで、宴会場は静まり返ってしまいました。
そして、カイネは血を吐くような思いで叫びます。
自分たちは、敵に屈しているだけではないか。
みんな、目を覚ましてほしい。
家族を殺されたことを思い出してほしい。
匈奴によって奪われた、大切な家族の命。
その恨みを忘れて、敵と戦うことすらせず、砦に閉じこもっているだけではありませんか。
こんなものの、いったい何が勝利だというのでしょうか。
カイネは、そう言い放って宴会場を飛び出してしまいました。
そして、城壁の上で、一人項垂れていたのです。
そこへ姿を現したのが、李牧さんでした。
「勝利ですか……」
まさか李牧さんが自分のところへ来るとは思っていなかったカイネ。
慌てて涙を拭います。
そんなカイネの隣に立った李牧さんは、静かに語り始めました。
李牧さんが語る、雁門には最初から勝利など存在しないという現実
李牧さんは、カイネに向かって、意外なことを告げました。
そもそも、この雁門には、初めから勝利など存在しないのだと。
その言葉に、カイネは驚きます。
しかし、李牧さんは、さらに説明を続けました。
匈奴の世界というものは、恐らくカイネたちが想像しているよりも、はるかに深く、広大なものなのです。
もし、その匈奴を討伐しようとするならば、少なくとも十万以上の大軍を、この雁門に集結させなければ勝てません。
それほどまでに、両者の戦力には大きな隔たりがあるのでした。
それならば、どうするのか。
勝てないのであれば、守るしかありません。
確かに、雁門という土地は、匈奴の脅威にさらされた絶望的な場所です。
しかし、逆に考えれば、これほどやるべきことが明白で、取り組みやすい土地もありません。
ただひたすら、守りに徹するだけです。
しかも、匈奴には弱点がありました。
馬上での戦闘では無敵を誇る匈奴ですが、攻城戦は苦手としているのです。
だからこそ、守るのであれば、徹底的に守り抜く。
たとえ臆病者と罵られようとも、卑怯者と呼ばれようとも、構いません。
味方には、匈奴の指一本すら触れさせない。
それこそが、自分に与えられた役目なのだと。
李牧さんは、そうカイネに語ったのでした。
カイネの反論! 敵に背を向けて生き延びても魂は死ぬのではないか!?
そんな李牧さんの覚悟を聞かされたカイネは、一瞬、何も言えなくなってしまいました。
しかし、それでも、黙っていることはできません。
趙人としての誇りは、どうなるのでしょうか。
雁門の民としての誇りは、どこへ行ってしまうのでしょうか。
匈奴に殺された父や母、そして妹の無念は、どうすればよいのでしょうか。
敵に背を向けて、ただ生き延びるだけでは、自分たちの魂は死んでしまうのではありませんか。
カイネは、涙ながらに李牧さんへ訴えました。
そんなカイネの言葉を聞いた李牧さんは、大きく息を吐きます。
そして、ある一人の若者について語り始めたのです。
李牧さんの過去! 家族を失った若者が引き起こした無謀な突撃
昔、カイネと同じ目をした若者がいました。
もっとも、その若者は男性だったそうです。
彼もまた、カイネと同じように、戦争によって両親を失っていました。
さらに、戦場では父と兄弟を失ったのです。
家族を次々と失った若者は、怒り狂いました。
そして、その怒りと憎しみは、同じように親兄弟を失った部隊内の若者たちにも伝染していきます。
やがて、彼らは誰の命令にも従わなくなりました。
そして、敵の大軍に向かって、無謀な突撃を敢行してしまったのです。
どう考えても勝ち目のない、無茶苦茶な突撃でした。
そこまで聞いたカイネは、恐る恐る李牧さんに尋ねます。
その部隊は、全滅してしまったのでしょうか。
ところが、李牧さんの答えは、カイネの予想とは違っていました。
なんと、その若者たちは、見事に敵将の首を挙げたのです。
それは「行角の戦い」と呼ばれる、そこそこ有名な戦いでした。
劣勢だった戦況を、一つの若い小隊が逆転させ、勝利へと導いた戦いだったのです。
しかし、その勝利の裏側には、あまりにも悲惨な結末がありました。
行角の戦いの真実! 敵将を討ち取った若者が失ったもの
その若者は、我を忘れて矛を振るっていました。
敵の矢を受け、槍で刺され、剣で斬りつけられても、止まりません。
全身から血しぶきを撒き散らしながら、ひたすら敵陣の奥へと斬り進んでいったのです。
そして、気がついた時には、彼の振るった矛が、敵の総大将の首を吹き飛ばしていました。
敵将を討ち取った若者は、激しく息を切らせながら、仲間たちに向かって声を上げます。
「やった……やったぞ、みんな!」
ついに、やり遂げたのです。
しかし、その呼びかけに答える仲間は、一人もいませんでした。
従兄弟の袁草も、幼馴染の龍兄弟も。
入隊した時から、ずっと一緒に戦ってきた大勢の仲間たちも。
その無謀な突撃によって、一人残らず命を落としていたのです。
若者は、確かに敵将を討ち取りました。
戦いにも勝利しました。
しかし、そこで彼の胸に訪れたものは、家族の恨みを晴らした達成感などではありません。
耐え難いほどの失意でした。
そこまで語った李牧さんは、当時の出来事を思い出すように、静かに目を閉じます。
そんな李牧さんの姿を見たカイネは、あることに気づきました。
「その人って、まさか……」
カイネがそう尋ねると、李牧さんは、改めて彼女に向き合い、語りかけたのです。
李牧さんがカイネに伝えたかった「守られるべきもの」
李牧さんは、カイネが家族の仇を討つためなら、自分の死さえ顧みないという気持ちは理解できると語ります。
それは、カイネが家族への愛にあふれ、雁門の民としての誇りに満ちた人物だからです。
そして、その気持ちは、周囲の人間が何を言おうとも、簡単に変わるものではありません。
李牧さんは、そのことを否定しませんでした。
しかし、それでも、どうしてもカイネに伝えておかなければならないことがあったのです。
それは、命の重さでした。
命というものは、カイネが考えている以上に重く、尊く、そして何よりも守られるべきものなのです。
家族の仇を討つことも、故郷の誇りを守ることも、大切なのかもしれません。
しかし、そのために、今、生きている仲間たちの命を失ってよいわけではありません。
そして、それはカイネ自身についても同じことです。
仲間たちの命も、カイネ自身の命も、何より守られるべきものなのです。
そのことを、どうか忘れないでほしい。
李牧さんは、そうカイネに告げたのでした。
衝撃の急展開! 李牧さんが雁門総司令を更迭される!?
それから、幾日かが経過しました。
カイネは、一人で丘の上にいました。
そして、先日、李牧さんから聞かされた言葉について、じっと考えていたのです。
そんなカイネのもとへ、突然、馬風慈が駆けつけてきました。
しかも、その様子は、明らかに尋常ではありません。
慌てふためく馬風慈を見て、カイネは何事かと声をかけます。
しかし、匈奴襲来を知らせる鐘は鳴っていません。
いったい、何が起きたのでしょうか。
すると馬風慈は、匈奴の襲撃ではないと答えます。
むしろ、ある意味では、それ以上に大変なことが起きてしまったのです。
なんと、李牧さんが北部司令官を更迭され、邯鄲中央へ強制送還されることになったというのです。
理由は、匈奴を相手に戦っていなかったことでした。
その事実が趙王の耳に入り、激怒した趙王が、李牧さんを捕らえさせたのです。
しかも、単なる更迭では済まないかもしれません。
総司令官という立場にありながら、趙国の誇りを汚した罪により、李牧さんは邯鄲で斬首される可能性すらあるというのです。
つい先日まで、雁門の住民たちから、命の恩人として感謝されていた李牧さん。
その李牧さんが、今度は趙王の命令によって捕らえられ、処刑されるかもしれないという事態に陥ってしまいました。
馬風慈から突然の報告を聞かされたカイネは、あまりの衝撃に言葉を失ってしまいます。
果たして、李牧さんの運命はどうなってしまうのでしょうか。
ここで、キングダム第891話「守られるべきもの」は終了となります。
考察ポイント① 実は李牧さんには雁門一派以外にも兵団がいた!? 謎の匈奴対策トラップの正体とは?
さて、今回のキングダム第891話で、私がまったく予想していなかった事実が判明しました。
なんと、李牧さんには、雁門の地元戦士団以外にも、独自に動かせる兵団が存在していたようなのです。
これは予想していませんでしたね。
というのも、先週までの考察記事で、私は一つの疑問を抱いていたからです。
そもそも、匈奴の索敵って、いったい誰がやっているのでしょうか??
雁門の地元戦士団は、家族を殺された復讐心と戦闘意欲に駆られており、匈奴との直接戦闘を望んでいます。
ところが、李牧さんの方針によって、彼らはまともに戦闘する機会すら与えられていません。
では、匈奴の動向を事前に察知し、集落の住民たちを避難させているのは、いったい誰なのでしょうか?
もしや、雁門の住民たち自身が、匈奴の索敵まで担当しているのでしょうか??
などと、先週までは予想していたわけです。
ところが、今週の本編では、物見櫓を組み立てたり、バリケードを設置したりと、まるで工兵のような工作活動に特化した部隊が存在していたことが判明しました。
なるほど。
考えてみれば、李牧さんは中央から派遣されてきた将軍です。
当然、赴任にあたって、中央から随伴してきた友軍がいてもおかしくありません。
いや、確かにその通りなんですが……。
だったら、最初から教えてくださいよ、李牧さん。(苦笑)
しかし、ここで新たな疑問が生じます。
住民たちの噂に上がっていた、物見櫓やバリケードとは、いったいどのような代物だったのでしょうか??
しかも、住民たちの話によると、これらの対策は、危険を冒して匈奴の領土の奥深くまで潜入して行われているというのです。
そのため、雁門の住民たちは、李牧さんが具体的に何をやっているのか、誰も見たことがありません。
これが、非常に気になります。
なにしろ、相手はあの李牧さんです。
それはそれは、きっと間違いなく、あまりにも李牧さんらしい……。
これまで幾度となく読者を笑わせてきてくれた、李牧師匠ならではの匈奴対策トラップが仕掛けられていたに違いありません!!(笑)
李牧さん主催! 第32回雁門争奪戦ゲーム大会、開幕!?
例えば、匈奴たちが雁門へ向かって進軍していると、突然、奇妙な施設が現れます。
そこへ、なぜか蝶ネクタイを締めた李牧さんが、満面の笑みで登場するのです。
李牧さん『ようこそ、匈奴の皆さん!! 第32回雁門争奪戦ゲーム大会に、今回もお越しいただきました!! 司会を務めますのは、この李牧です!!』
匈奴一同『おおおおおお!!』(拍手)
李牧さん『さて、今回も匈奴の皆さんをお待ちかねの、私、李牧特製の罠を多数ご用意しております!!』
匈奴A『待ってましたー!!』
李牧さん『それでは、まず第一関門! 趙国歴史クイズです!!』
李牧さん『趙へ侵攻するなら、これくらいは知っていて当然!! 第一問! 初代趙国王の名前は!?』
匈奴A『趙籍!!』
李牧さん『ぶっぶー!! 残念、不正解です!!』
匈奴A『えええええ!?』
匈奴B『趙雍! あの武霊王ですね!!』
李牧さん『さすがBさん!! 正解です!!』
匈奴A『なんでだよ!? 趙籍が趙国を建国したんじゃねーのかよ!?』
李牧さん『はい、いい質問ですねー!!』
李牧さん『趙籍さんは、大国「晋」の家臣から自立し、周王から正式に諸侯として認められて趙国を建国した人物です。しかし、この時点では、まだ「王」を名乗っていなかったんですよー!!』
李牧さん『つまり、趙国の初代君主と、最初に王を称した人物は違うんですねー!! 残念!!』
匈奴A『くっそおおお!! 引っかけ問題じゃねーか!!』
李牧さん『それでは、次の問題に参りましょう!!』
……などという具合です。
しかも、クイズに正解しなければ、バリケードの扉が開きません。
匈奴たちは、趙国に侵攻するために、なぜか趙国の歴史を勉強させられることになってしまうのです。(笑)
李牧さん特製! 匈奴を待ち受ける恐怖の障害物競走!!
もちろん、李牧さんの罠は、歴史クイズだけではありません。
その先には、さらに恐ろしい障害物が待ち構えています。
例えば、物見櫓の上から、いくつものアンパンがぶら下がっているのです。
ただし、そのうち一つだけには、大量の辛子が仕込まれています。
匈奴A『よっしゃあ!! 俺が一番乗りだ!!』
匈奴B『待て待て!! 俺が先だ!!』
匈奴C『うおおお!! 取ったぞ!!』
ガブッ!!
匈奴C『かっ、辛ええええええええ!!』
李牧さん『おおっと!! Cさん、大当たりです!! 残念ながら、辛子入りアンパンを引いてしまいましたー!!』
匈奴一同『ギャハハハハハ!!』
さらに、その先には、匈奴たちが大好きな羊を使った、恐怖の○×ゲートが待ち構えています。
李牧さん『さあ、次の問題です!! 正解だと思うゲートに、思い切り突進してください!!』
匈奴A『おお!! 向こうに羊がいるぞ!!』
匈奴B『よっしゃあ!! あの羊は俺のものだ!!』
しかし、片方のゲートの向こうには、羊ではなく、硬い鉄板が仕込まれているのです。
匈奴A『うおおおおお!!』
ドゴォォォン!!
匈奴A『ぐはああああ!!』
李牧さん『残念!! Aさん、不正解です!!』
匈奴B『ギャハハハハ!! 何やってんだお前!!』
李牧さん『さあ、Bさんは見事に羊を獲得できるのでしょうか!?』
……などなど。
まるで、90年代のバブル期に流行した、豪華景品付きのテレビバラエティー番組ではありませんか。
しかも、李牧さんの恐ろしいところは、これらの罠が、必ずしも匈奴を殺傷するためのものではないという点です。
むしろ、その逆です。
匈奴の警戒心を解き、和気あいあいとゲームに参加させることによって、侵攻そのものを遅らせているのではないでしょうか!?
娯楽の少ない草原地帯で暮らす、素朴な匈奴の皆さん。
そんな彼らの好奇心と、暇を持て余す心の隙間を、李牧さんは巧みに突いているのです。
匈奴たち、雁門襲撃を忘れてゲーム大会に夢中になる!?
そして、ゲーム大会を終えた匈奴たちは、すっかり上機嫌になって雁門へと向かいます。
匈奴A『アハハッ!! いや~、それにしても、今日もあの李牧とかいう奴の趙国歓迎会、面白かったな!!』
匈奴B『ああww 次回も楽しみだぜ!!』
匈奴B『俺なんか、羊一頭の引換券をもらったぞ!! いや~、早く連中の集落に着くのが楽しみだww』
匈奴A『マジかよ!? いいなあ、お前!!』
匈奴C『あれ……? ちょっと待てよ。』
匈奴A『ん? どうした?』
匈奴C『あの集落……誰もいないみたいだぞ??』
匈奴A『えええええ!?』
匈奴B『ちょっと待て!! もしかして、もう閉店の時間なのか!?』
匈奴A『マジかよ!? 俺たち、交換の時間に間に合わなかったのか!?』
匈奴B『おいおい!! 俺の羊一頭はどうなるんだよ!!』
匈奴A・B・C『おーーーい!! 待ってくれえええええ!!』
※もちろん、彼らは匈奴語で叫んでいるため、雁門の住民たちには、匈奴の大軍が雄叫びを上げながら襲撃してきているようにしか見えません。
一方、その頃、すでに砦への避難を完了していた雁門の住民たちは……。
雁門住民A『ひいいいい!! また匈奴が襲ってきたぞ!!』
雁門住民B『なんて恐ろしい奴らなんだ!! あんなに大声で叫びながら!!』
雁門住民C『でも、今回も李牧将軍のおかげで、全員無事に避難できたぞ!!』
そして、遠くからその光景を眺める李牧さん。
李牧さん『フッ……今回の催し物も、匈奴の皆さんには、たまらなかったようですね。』
李牧さん側近『は、はあ……??(汗)』
こうして、今回も雁門は、匈奴による襲撃から無事に守られたのでした。
李牧さんの真の武器は、圧倒的な「笑いの力」だった!?
もちろん、ここまでの話は、私の完全な妄想です。(笑)
しかし、今回の本編で明らかになった情報を整理すると、やはり不思議な点が残ります。
雁門の住民たちも、地元の戦士団も、李牧さんが匈奴の勢力圏で、具体的にどのような工作活動を行っているのか把握していません。
その一方で、李牧さんが自由に動かせる兵力も、工作に使用できる資材も、決して潤沢とは思えません。
にもかかわらず、匈奴の進軍は遅れ、雁門の住民たちは事前に避難を完了し、被害を受けずに済んでいるのです。
では、李牧さんは、いったいどのような方法で、匈奴の侵攻を遅らせているのでしょうか?
単純な軍事力による阻止ではないことは、今回の本編でも明らかになっています。
となれば、李牧さんが、匈奴の心理や行動を利用している可能性は十分に考えられます。
そして、その方法が、他の追随を許さないほどの……。
圧倒的な「笑いの力」であったとしても、もはや不思議ではないのではないでしょうか!?(笑)
何しろ、相手はあの李牧師匠です。
キングダム本編で数々の奇策を披露してきた李牧さんなら、匈奴の皆さんをバラエティー番組に参加させながら、知らないうちに雁門の住民たちを避難させるくらい、朝飯前なのかもしれません。
そして何より、匈奴の皆さんも、毎回楽しく参加してくれるのですから、これほど平和的な防衛戦略もありません。
これぞ、李牧さん流・戦わずして雁門を守る、究極の匈奴対策なのではないでしょうか!?(笑)
そりゃあ、毎回こんな調子で、李牧さん主催のゲーム大会に参加させられた挙げ句、羊も奪えず、景品交換にも間に合わず、手ぶらで帰る羽目になるのですから……。
本編で雁門の住民たちが語っていた通り、匈奴の皆さんも、そりゃあ「戦争に負けたみたい」にうなだれて帰るでしょうね。(笑)
考察ポイント② 李牧さんの出自が判明! 猛将から軍師に転向しても、実は戦い方が変わっていない!?
さて、今回のキングダム第891話では、李牧さんの過去についても、重要な情報が明らかになりました。
かつての李牧さんは、現在のような軍師型の将軍ではなく、自ら矛を振るって敵陣に突撃する、猛将型の武人だったようです。
そして、家族を失った怒りと復讐心に駆られ、仲間たちを巻き込んで敵軍に突撃した結果、敵将を討ち取ることには成功したものの、仲間たちは全員死亡してしまいました。
その絶望的な経験が、後に李牧さんが軍師型へ転向するきっかけになったというわけです。
このあたりは、以前の読み切り版で描かれていた李牧さんの過去と同じですね。
キングダム連載本編では、その後、李牧さんが武神・龐煖(ホウケン)と出会い、後のポケモンパートナーとして契約するまでの様子も描かれていました。(笑)
そして、現在の李牧さんの戦略を振り返ってみると、この時期に、その基本形が出来上がったのかもしれません。
すなわち、圧倒的に有利な戦況を生み出すまでは、のらりくらりと時間を稼ぎ、場合によっては凡戦に徹する。
そして、決定的な局面で局所的に戦力を集中させ、一気に敵を圧倒するという戦い方です。
今回の雁門防衛戦も、まさにその延長線上にあるように思えます。
ところが……。
あれ??
ちょっと待ってください。
しかし、それでも李牧さん??
「行角の戦い」と呼ばれる、そこそこ有名な戦いで、仲間を全員失い、絶望に打ちひしがれるほど落ち込んだ割には……。
その後の戦い方って、あんまり変わってなくないですか??(笑)
桓騎戦でも飛信隊戦でも繰り返される、李牧さんの大軍運用の迷走
例えば、桓騎との戦いです。
宜安と肥下の両城をめぐる戦闘では、李牧さんは三十万規模の大軍を動員していたにもかかわらず、桓騎の動きによって両城の間を往復させられ、散々振り回されることになりました。
大軍を動員して敵を包囲し、圧倒的な戦力差によって撃破するはずだったのに、逆に桓騎の行動に対応するため、全軍規模で右往左往する羽目になってしまったわけです。
また、邯鄲周辺で飛信隊を迎撃した際にも、同じようなことが起きています。
わずか一万の飛信隊を討ち取るために、紀彗軍まで含めた十万規模の兵力を主戦場から離脱させたにもかかわらず、結局、李信たちを取り逃がしてしまいました。
これでは、何のために大軍を動員したのか、分かりません。
これらは、李牧さんが大軍を一斉に動かし、まるで保育園のサッカーのように、敵のいる場所へ兵力を集中させる戦術を仕掛けた結果、失敗してしまった例でもありました。
その過程では、そもそもの戦闘目的を途中で忘れてしまったのではないかと思えるような場面まであります。
こうした事例を振り返ってみると、一つの共通点が見えてきます。
これって、「行角の戦い」で仲間たちと一緒に我を忘れ、全員で敵に突撃してしまったことと、本質的には同じではありませんか??
当時の李牧さんは、復讐心に駆られて、部隊全員を無謀な突撃に巻き込みました。
そして、後年の李牧さんは、目の前の敵を討ち取るために、大軍をまとめて動かしてしまう。
もちろん、動機も戦況も異なります。
しかし、特定の戦闘目標に意識を集中させすぎて、他の戦線や全体の戦況への対応がおろそかになるという意味では、共通する部分があるように思えるのです。
合従軍編でも李牧さんは、戦略目標の優先順位を間違えていた!?
さらに振り返れば、合従軍編でも、似たような問題がありました。
李牧さんは、秦国を滅ぼすために、他国の軍勢まで動員した大規模な合従軍を組織しました。
そして、函谷関を突破できないと見るや、別働隊を率いて南道から咸陽を目指し、蕞城の攻略を進めることになります。
しかし、他国の軍勢を含む合従軍である以上、李牧さん自身の思惑だけで、すべての部隊を自由に動かせるわけではありません。
他国の将軍たちへの配慮も必要ですし、援軍を呼び込むにも、さまざまな制約が生じます。
そして、その動きは麃公将軍に察知され、さらに飛信隊まで介入することになりました。
結果として、蕞城攻略は麃公軍や飛信隊たちの妨害を受け、秦王・嬴政による蕞城防衛と山の民の援軍もあって、失敗に終わります。
ここでも、李牧さんは大規模な兵力を動員しながら、戦略上の決定的な目的を達成できませんでした。
もちろん、合従軍という多国籍軍を指揮する難しさはあったでしょう。
しかし、それだけに、限られた時間と兵力をどこへ集中させるべきなのか、優先順位を明確にする必要があったはずです。
鄴防衛戦でも、李牧さんは全方面に兵力を逐次投入してしまった!?
そして、もう一つ典型的なのが、鄴防衛大戦です。
あの戦いでは、趙国には王都軍以外にも、各地に相当な規模の領域軍が存在していました。
つまり、趙軍全体で見れば、李牧さんが動員できる可能性のある兵力は、決して少なくなかったのです。
しかし、問題は、その兵力を何のために使うのかという点でした。
王翦軍を撃破することを最優先にするのか。
それとも、秦軍を戦域全体で包囲し、兵糧が尽きるまで待つのか。
あるいは、鄴の包囲を解き、城内への補給路を確保することを優先するのか。
いずれも、戦略上の重要な目的です。
しかし、これらをすべて同時に達成しようとすれば、当然、兵力も指揮能力も分散してしまいます。
ところが、李牧さんは、これらの目的に明確な優先順位をつけないまま、各方面へ次々と兵力を投入してしまったように見えます。
王翦軍への対処も必要。
桓騎軍による鄴包囲への対処も必要。
各地の秦軍の動きにも対応しなければならない。
結果として、あちらにも、こちらにも兵力を振り向けることになり、最終的には王翦にも桓騎にも勝利できませんでした。
これだけ豊富な兵力を持ちながら、戦略目標の優先順位を決められず、全方面に逐次投入してしまったことこそ、李牧さんの大軍運用における弱点だったのではないでしょうか??
李牧さんは寡兵の運用には強いが、大軍を持つと失敗する!?
こうして過去の戦いを並べてみると、李牧さんの軍事的な特徴が、かなりはっきりしてきます。
李牧さんは、寡兵の運用については、非常に優れた能力を持っています。
今回の雁門防衛戦が、まさにそうです。
限られた兵力と資材しか持たない状況で、匈奴の行動を予測し、住民たちを事前に避難させる。
正面から戦えば勝ち目がないと判断すれば、そもそも戦闘を成立させない。
敵を撃破することよりも、住民の生命を守るという目的を徹底する。
このような状況では、李牧さんの判断には、ほとんど迷いがありません。
ところが、これが大軍を使った戦いになると、どうでしょうか。
兵力が豊富であれば、選択できる作戦も増えます。
敵の主力を撃破することも、敵の補給を断つことも、城を救援することも、敵の別働隊を追撃することも可能になります。
しかし、選択肢が増えるということは、それぞれの作戦に優先順位をつける必要が生じるということでもあります。
そして、李牧さんは、この場面で判断を誤ることが目立つのです。
敵の動きに反応して、余計な作戦を追加してしまう。
本来の目的から外れた敵部隊を追いかけてしまう。
大軍を動かせるがゆえに、かえって見落としが増えてしまう。
その結果、局所的には圧倒的な兵力差を作り出しているのに、戦役全体では思うような成果を上げられないことがあるのです。
つまり、李牧さんは、少ない戦力を使って一つの目的を達成することには強いのに、豊富な戦力を使って複数の目的を同時に達成しようとすると、途端に判断が怪しくなるのではないでしょうか??
「行角の戦い」の悲劇は、李牧さんの本質を変えられなかった!?
そう考えると、今回明らかになった「行角の戦い」の悲劇も、少し違った意味を持ってくるように思えます。
確かに、李牧さんは、若い頃に仲間たちを全員失うという、絶望的な経験をしました。
そのショックがあまりにも大きかったことは、今回のカイネへの語りかけからも分かります。
そして、その経験を通じて、李牧さんは、仲間の命を守ることの重要性を学びました。
だからこそ、雁門では、敵を倒すことよりも、味方を一人も死なせないことを優先しているのでしょう。
しかし、戦闘における判断の癖まで、完全に変わったのでしょうか。
どうも、そうではないように思えるのです。
若い頃は、家族の仇を討つことに夢中になり、仲間たちを全員突撃させてしまいました。
そして、大軍を率いるようになってからも、目の前の敵を討ち取ることに意識を集中させ、他の戦略目標を見落としてしまう場面が繰り返されています。
もちろん、これは李牧さんのすべての敗戦を説明できるものではありません。
実際には、趙王や中央政府との対立、兵站、他国の軍勢との連携など、さまざまな要因も関係しています。
それでも、今回の過去編を読んだことで、李牧さんの戦い方に一貫した特徴があるように感じられました。
「行角の戦い」で仲間を全員失った李牧さんは、命の大切さを学び、戦術を変えることはできた。
しかし、豊富な戦力と複数の選択肢を与えられた時、一つの目標に意識を集中させすぎてしまうという、本人の根本的な性質までは変えられなかったのではないでしょうか。
もしかすると、今回のキングダム第891話は、単なる李牧さんの過去紹介ではなく……。
人間というものは、どれほど大きな挫折を経験し、考え方や行動を改めたとしても、その本性までは、そう簡単に変わらない。
そんな教訓を描いているのかもしれませんね。