キングダム第893話「最後の助け」ネタバレ内容
① カイネが河了貂に差し出した最後の助け
「カイネ様、空が白んできました。そろそろ……」
夜が明けようとする頃、牢の外から燕隼がカイネに声をかけます。
その声を受けたカイネは立ち上がり、牢の扉を開けます。
ところが、そこでカイネは突然、燕隼に腰の短刀を貸すように告げました。
何のために短刀が必要なのか分からず、戸惑う燕隼。
しかし、カイネは「いいから貸せ」と短刀を受け取ると、苦渋の表情を浮かべながら、牢に囚われている河了貂に向き直ります。
そして、重い口を開きました。
朝になって趙忽将軍が戻ってくれば、河了貂は間違いなく大勢の前で拷問の限りを尽くされ、殺されることになる。
それならば、そうなる前に、今ここで自分の手によって、ほんの一瞬で楽にしてやれるのではないか。
カイネは震えながら、河了貂にそう告げたのです。
自分たちがここからいなくなれば、もう河了貂を守る者は誰もいません。
生きたまま手足を切り落とされ、腹を斬り裂かれて殺されるくらいなら、自分の手にかかって静かに死んだ方が、よほどましだと。
そして、カイネは河了貂に懇願します。
「これが私がお前にしてやれる最後の助けだ。河了貂……どうか……」
それは、河了貂を殺そうとする敵将の言葉ではありませんでした。
これから河了貂を待ち受けている凄惨な運命を知っているからこそ、カイネは自らの手で、その苦しみから解放しようとしていたのです。
一方の河了貂も、先ほど自分を拷問しようとしていた趙軍の男たちの姿を思い出していました。
彼らの手にかかれば、自分がどのような目に遭わされるのか。
それを理解した河了貂は、ついにカイネの申し出を受け入れます。
「分かった……頼むよ、カイネ……」
こうして河了貂は、カイネの手によって命を絶たれることを覚悟したのでした。
② 河了貂の心臓を狙うカイネの短刀
燕隼が牢の外で周囲を警戒する中、牢の内部では、カイネが河了貂に短刀を突き立てようとしていました。
河了貂はカイネに抱きつくような体勢を取っています。
おそらく、最後の瞬間に互いの顔を見なくて済むようにするための配慮だったのでしょうか。
カイネは河了貂に、しっかりと自分につかまっているように告げます。
そして、苦しむのはほんの数秒だけだと説明しました。
「……うん」
そう答えながら、河了貂はカイネをつかむ手に力を込めます。
カイネもまた、覚悟を決めて言葉を続けました。
動かないように。一刺しで確実に心臓を貫くから、と。
失敗すれば、かえって河了貂を苦しませることになります。
カイネは短刀を構え、三つ目の合図で刺すと告げます。
「一つ……」
「二つ……」
死を目前にした河了貂。
その瞬間、彼女の心に浮かんだのは、飛信隊の仲間であり、共に戦い続けてきた信の名前でした。
そして、カイネの短刀が河了貂の心臓へと迫ります。
③ 本軍へ帰還したカイネの異変
場面は変わり、まだ夜が明けきらない中、カイネが本軍へ向けて馬を走らせていました。
本軍に到着すると、配下の兵士たちは口々にカイネの無事を喜びます。
一足先に戻っていた馬易たちも、カイネに状況を報告しました。
趙忽軍の兵士たちが強硬な態度を取っていたため、これ以上近づくことができず、カイネを迎えに行けなかったとのことです。
ただし、カイネの指示通り、本軍はすでに所定の持ち場へ移動させていました。
また、カイネと一緒に残っていた燕隼の姿が見えないことを気にする者もいました。
しかし、カイネは燕隼もすぐに戻ってくると説明します。
そして、それよりも自分たちの持ち場へ戻ることを優先するよう命じました。
ところが、ここで配下の兵士たちは、カイネの様子がおかしいことに気づきます。
カイネの顔色は真っ青で、明らかに普通ではありません。
心配した兵士たちが声をかける中、その異変が河了貂との一件に関係していると察した者が、河了貂について尋ねました。
すると、カイネは静かに目を閉じます。
彼女の脳裏には、先ほど牢の中で起きた出来事がよみがえっていました。
④ 「やっぱりまだ死なない」河了貂が選んだ最後の抵抗
再び、場面は牢の中へと戻ります。
河了貂の心臓に短刀を突き立てようとしていたカイネ。
「一つ……二つ……」
そして、三つ目の数字を口にすると同時に、カイネは短刀を突き出そうとしました。
ところが、その瞬間です。
「待って!」
河了貂が突然、カイネを制止しました。
間一髪のところで手を止めたカイネは、息を切らせながら河了貂の名前を呼びます。
すると、河了貂は震えながら謝りました。
「ご……ごめん、カイネ……」
そして、続けます。
「や……やっぱりまだ死なない。死ねない……」
河了貂は、ここで自分が死ぬことを拒絶したのです。
その理由は、これまで共に戦ってきた飛信隊の仲間たちにありました。
隊士たちは、最後まで諦めることなく戦っていました。
そして、河了貂自身が軍師として、彼らを最後まで戦わせてきたのです。
だからこそ、自分だけがここで諦めるわけにはいきません。
「だからオレもギリギリまで戦う……」
「ギリギリまで生きる」
たとえこの身体が八つ裂きにされるとしても、最後の最後まで生きることを諦めない。
それが河了貂の出した結論でした。
しかし、その言葉を聞いたカイネは、思わず制止します。
「……よせ。絶対に後悔するぞ」
カイネには、河了貂がこれからどのような目に遭うのか、容易に想像できていました。
趙忽将軍が戻れば、河了貂を待っているのは容赦のない拷問と処刑です。
今なら一瞬で終わらせられる苦痛が、この先、どれほど長く続くことになるのか。
それでも河了貂の意志は変わりませんでした。
「……だとしても今は死なない」
そして、自分のために苦しい決断をしてくれたカイネに感謝を伝えます。
「本当にありがとう、カイネ……」
「でも、もう行って……」
こうして河了貂は、カイネの最後の助けを断り、自らの運命に立ち向かうことを選んだのでした。
⑤ 燕隼が引き受けた最後の時間稼ぎ
河了貂の決意を聞いても、カイネはなお説得を続けようとしていました。
しかし、そこで燕隼が口を開きます。
「カイネ様、河了貂の言う通りです。行って下さい」
そして、カイネに代わって自分がここに残ると申し出ました。
趙忽将軍が戻ってくるまでの間、趙備明たちが河了貂に手を出さないよう、できる限り妨害するというのです。
もちろん、燕隼がいつまでも河了貂を守れるわけではありません。
趙忽将軍が戻ってしまえば、河了貂の処遇を覆すことはできないでしょう。
それでも、少なくとも趙忽将軍が帰還するまでの時間だけは、河了貂が拷問を受けないようにするということでした。
燕隼の言葉を聞いたカイネは、ついに説得を諦めたのか、静かに目を閉じます。
そして、河了貂のことを燕隼に託し、牢を後にしました。
カイネが河了貂のためにできることは、もはや何も残されていなかったのです。
⑥ カイネが思い出したカイヤの最期
再び、場面は軍を率いて持ち場へと戻るカイネへと移ります。
馬を走らせながら、カイネは激しい後悔に襲われていました。
「……判断を誤った……」
河了貂を、無理にでも死なせるべきだった。
カイネはそう考えていたのです。
このままでは、河了貂は本当に八つ裂きにされてしまう。
そのことは、最初から分かっていました。
それなのに、自分には最後の一刺しができなかった。
カイネは、自らの判断を悔やみます。
しかし、ここで彼女は、もう一つの事実に気づいていました。
仮に河了貂が途中で止めていなかったとしても、自分には本当に殺すことができたのだろうか、と。
あの瞬間、カイネの脳裏には、かつて自分の腕の中で命を落としたカイヤの姿が浮かんでいたのです。
また、自分の腕の中で誰かを死なせるのか。
そう思った瞬間、カイネの手は動かなくなっていました。
つまり、河了貂が死を拒絶しただけではありません。
カイネ自身もまた、最後の一線を越えることができなかったのです。
そして、河了貂を救えなかったという後悔を抱えたまま、カイネは本軍へと戻っていきます。
⑦ ソルン隊が秦軍と交戦! カイネが救援に向かう
その時、カイネのもとに急報が飛び込んできました。
中間地点に留めていたソルン隊が、敵と交戦しているというのです。
しかも、ソルン隊は苦戦を強いられ、右前方の森の先へと追い込まれていました。
敵軍の規模については、まだ分かっていません。
報告を聞いたカイネは、すぐさまソルンの安否を尋ねます。
「ソルンは無事か!?」
しかし、伝令から返ってきた答えは、分からないというものでした。
とにかくソルン隊は防戦一方であり、物見の報告によれば、急いで援軍を送らなければ全滅する恐れがあるとのことです。
それを聞いたカイネは、即座に決断しました。
本軍への合流は後回しです。
まずはソルン隊を救出する。
「本軍合流は後回しだ。ソルン隊を助けに行くぞ!」
こうしてカイネは、配下の兵士たちを率いて、ソルン隊が交戦しているという森の先へ向かうことになりました。
⑧ 北上する李牧さんのもとにも急報が届く
一方その頃、李牧さんも軍を率いて北上していました。
すでにかなりの距離を進んできたのか、配下の兵士からは、馬の息が上がっているとの報告が入ります。
そろそろ休憩を入れた方がよいのではないか。
そう進言されますが、李牧さんは馬を止めようとしません。
「邯鄲の事後処理に時を取られました。もう少し進みましょう」
邯鄲での事後処理に予想以上の時間を費やしてしまったため、行軍を急ぐ必要があるようです。
そして李牧さんは、北上の最後の大一番について口にしかけました。
ところが、その時です。
急報を知らせる伝令が、李牧さんのもとへ駆け込んできました。
伝令によれば、現在地から左方へ三つほど森を越えた先で、友軍が秦軍と交戦しているというのです。
「秦軍と交戦?」
李牧さんは、訝しげな表情を浮かべます。
周囲の兵士たちも、この報告を不審に思っていました。
そもそも、こんな場所に軍と呼べるほどの秦兵がいるはずはありません。
仮に秦兵がいたとしても、それは敗残兵による小規模な抵抗にすぎないはずです。
その程度の小競り合いで、わざわざ李牧さんの行軍を妨げるような報告を持ってくる必要があるのか。
配下の兵士たちは、伝令を叱責します。
しかし、伝令には、どうしても李牧さんに伝えなければならない情報がありました。
⑨ カイネの名前を聞いた李牧さんが即座に動く
伝令は息を整えながら、報告を続けます。
実は、自分たちも最初は残党との小競り合いだと思っていたとのことです。
ところが、物見から思いがけない情報が入っていました。
なんと、秦軍と交戦している趙軍部隊の中に、カイネ将軍がいるというのです。
「カイネ!?」
思いもしなかった名前が挙がり、李牧さんは驚きの表情を浮かべます。
そして、伝令に確認しました。
「何かの間違いでは?」
そもそも、カイネの持ち場はもっと後方にあるはずです。
本来であれば、カイネがこのような場所で秦軍と交戦していること自体、おかしいのです。
しかし、伝令の報告によれば、カイネは何らかの理由で小隊を率いて先へ進んでおり、その帰路で敵軍と遭遇したらしいとのことでした。
当然、事情を知らない李牧さんの配下たちは困惑します。
なぜカイネが持ち場を離れていたのか。
そもそも、何のために小隊だけで先へ進んでいたのか。
分からないことばかりです。
しかし、李牧さんは余計な質問を重ねませんでした。
まず確認したのは、ただ一つ。
「危ういのですか?」
カイネが危険な状況に置かれているのかどうかです。
伝令は、カイネの部隊が敵に包囲されていると報告しました。
そのため、李牧さんに一刻も早く伝えなければならないと判断したのです。
すると、李牧さんは即座に命じます。
「案内しなさい」
そして、そのまま馬を走らせました。
⑩ 雁門騎馬隊すら追いつけない李牧さんの全速力
カイネの危機を知った李牧さんは、軍の一部を率いて救援に向かうことを決断します。
喬武に対して、自分の後を三千騎で追わせるよう指示しました。
残りの部隊については、休息を取らせた後、予定通り北上を続けさせます。
そして、救援に向かう三千騎は、足の速い部隊を選抜し、全速力で進ませるという命令でした。
こうして李牧さんは、カイネを救うため、自ら先頭に立って馬を走らせます。
ところが、その速さが尋常ではありません。
後を追う雁門騎馬隊の兵士たちが、驚愕するほどの速度だったのです。
雁門騎馬隊といえば、騎馬戦を得意とする精鋭たちです。
その中でも最速を自負する兵士たちが、李牧さんの馬に追いつくことができません。
「雁門騎馬隊最速の我々が……追いつけぬ」
兵士たちは、李牧さんの尋常ではない速さに驚きます。
それほどまでに、李牧さんはカイネのもとへ急いでいたのでした。
やがて、戦場が近づいてきます。
後方から追いついてきた騎馬隊の兵士たちは、間もなく乱戦の場に到着すると報告しました。
そして、前衛は自分たちに任せるよう進言します。
しかし、李牧さんは馬を止めません。
兵士たちの申し出にも構わず、そのまま先へ進み続けます。
そして、ついに戦場の喚声が聞こえてきました。
⑪ 李牧さんが目撃した衝撃の光景! 秦軍の中に信が!
森を抜けた李牧さんの目の前に広がっていたのは、秦軍と趙軍が入り乱れる激しい乱戦の光景でした。
報告の通り、カイネの部隊は秦軍に包囲されていました。
カイネを守ろうとする趙軍兵士たちは、必死に奮戦しています。
しかし、敵軍の勢いは激しく、カイネの周囲では激しい戦闘が続いていました。
そして、森から飛び出した李牧さんは、その光景を目にして大きく目を見開きます。
なぜなら、カイネたちを包囲する秦軍の中に、絶対に見過ごすことのできない人物がいたからです。
秦軍の兵士たちの中で、大きな矛を振るっていたのは……。
なんと、飛信隊の信だったのです!!
河了貂が捕らえられ、カイネがその処遇に苦悩していた、その一方で。
信はすでに、この場所まで迫っていました。
しかも、カイネを守る趙軍と交戦している真っ最中です。
カイネを救うために駆けつけた李牧さん。
そして、その目の前に現れた信。
二人が、このような形で戦場に姿を現すことになるとは……。
李牧さんの目の前で、信がカイネの部隊を攻撃しているという、まさかの事態が発生したところで、キングダム第893話「最後の助け」は終了です。
考察ポイント① 燕隼さんがいい奴すぎる件。そして趙軍、もう勝ったつもりになってませんか?(汗)
さて、今回まず触れておきたいのが、脇役の燕隼さんです。
この人、滅茶苦茶いい奴じゃないですか。
河了貂を殺すことができず、苦悩するカイネに対して、自分が牢に残るから先に行けと申し出る燕隼さん。
しかも、趙忽将軍が戻ってくるまで、趙備明たちが河了貂に手を出さないよう、何とか妨害してみせるというのです。
いやいや、そんなの一人でどうにかできるんですかね??
相手は同じ趙軍とはいえ、将軍直属の兵士たちですよ??
カイネがいなくなった後、燕隼さん一人でどこまで抵抗できるのか、正直かなり怪しいところです。
しかし、ここまで来ると、もう茶化す要素をまったく持ち込めないくらい、いい奴です。
もう、いっそのこと三人でそのまま脱獄すればよかったんじゃないですかね??(汗)
カイネも燕隼も、河了貂を守るために、そこまで覚悟を決めているわけでしょう?
だったらもう、趙軍なんか辞めちゃって、三人でどこか遠くへ逃げてしまえばいいじゃないですか。
きっと、野に下っても、うまくやっていけますよ、君たち。
……まあ、カイネの場合、李牧さんを置いて逃げるという選択肢は、最初から存在しないのでしょうけどね。(笑)
趙軍は次の作戦に向けて動いていたようですが……
さて、ここからが今回の本題です。
今回、以前から予想していた通り、カイネや李牧さんたちは、すでに次の作戦行動へ向けて動いていた様子が描かれました。
本軍との合流や、各部隊の持ち場への移動、さらにソルン隊のような小・中規模部隊による中間地点の展開など、まあ、やることはやっていたようです。
李牧さん自身も、邯鄲での事後処理を終え、北上を急いでいました。
つまり、趙軍全体としては、すでに次の戦いに向けた移動と再配置が始まっていたわけです。
で、ここで気になるのが……。
趙忽軍、何やってるんですか??
いや、今回の描写を見る限り、趙忽将軍本人まで、河了貂の拷問や処刑に乗り出そうとしているわけですよね??
ちょっと待ってください。
絶対に、そんなことしている場合じゃないでしょうに。(汗)
今、飛信隊たちが全力で反撃してきたら、間違いなく趙忽軍だけが穴になりますよ、穴。
李牧さん本人だって、秦軍に肉薄された邯鄲での事後処理に時間を取られ、ようやく北上を再開したところです。
だったら趙忽将軍は、紀彗なり傅抵なり、周辺の趙軍部隊と連携して、李牧さんが戦線に戻るまで、追い散らした飛信隊と楽華軍に睨みを利かせておかなければまずいでしょう。
いくら秦軍を一度撃退したからといって、敵の主力武将を討ち取ったわけでも、軍団を壊滅させたわけでもないのです。
そんな状況で、捕虜の軍師をどうやって拷問するかに夢中になっている場合ではありません。
李牧さん、もう王翦相手に戦うつもりですか??
そして今回、何気に李牧さん本人からも、現状認識の甘さを感じさせる発言が飛び出しています。
配下の兵士が、馬の息が上がってきたため、そろそろ休憩を入れるべきではないかと進言した場面です。
これに対して李牧さんは、
「邯鄲の事後処理に時を取られました。もう少し進みましょう」
そして、
「北上の最後の大一番に……」
と、次の戦いを見据えている様子でした。
……いや、あなた??
李信も蒙恬も羌瘣も、全員討ち漏らしているんですよ??
しかも、飛信隊も楽華軍も羌瘣軍も、まだ半数以上の戦力を残しているじゃないですか。
そもそも、邯鄲に攻め込んできた飛信隊だって、全軍六万のうち、たった一万程度だったわけでしょう??
残りの軍勢は、まだ戦える状態で残っているのです。
そして、そういう秦軍の深縦突撃を迎撃して、突出した部隊を叩く作戦を実行したのは、ほかならぬ李牧さん自身じゃないですか。
つまり、秦軍の主力がまだ大量に残っていることも、その部隊がどこにいるのかも、本来なら李牧さんが誰より把握していなければならないはずです。
それなのに……。
何をもう、王翦相手に戦うつもりでいるんですか??
気が早すぎますよ、李牧さん。(汗)
もちろん、趙軍としては北方での決戦を急がなければならない事情があるのでしょう。
しかし、それと、背後に残っている秦軍の脅威を無視していいかどうかは、まったく別の話です。
李信も蒙恬も羌瘣も健在で、しかも各軍団には十分な兵力が残っている。
この状況で、彼らが再び攻勢に出てくることなど、十分に予想できるでしょう。
ましてや、飛信隊に至っては、軍師の河了貂を捕虜にされているのです。
絶対に、取り返しに来るに決まっているじゃないですか。
趙忽将軍も李牧さんも、秦軍の反撃を甘く見すぎでは?
そう考えると、今回の趙軍の行動には、どうにも引っかかるところがあります。
一方では、飛信隊が河了貂を奪還しに来る可能性が十分にあるにもかかわらず、趙忽将軍が捕虜の拷問に意識を向けています。
河了貂から秦軍の居場所を聞き出そうとしているようですが、そもそも敵軍がまだ大規模な戦力を維持している以上、そんな悠長なことをしている場合なのでしょうか。
そして、もう一方では、李牧さんがすでに北部戦線へと意識を向けています。
このまま王翦との決戦に向かうつもりなのか、中央戦線の残存秦軍への対応については、具体的な指示が描かれていません。
もちろん、李牧さんが紀彗や傅抵たちに中央戦線の指揮を任せているのであれば、話は別です。
李牧さんが北上する一方で、残存秦軍を監視・牽制する部隊が組織的に配置されているなら、それは合理的な判断でしょう。
しかし、少なくとも今回の描写では、そうした他の趙軍武将たちの姿がほとんど見えてきません。
むしろ、カイネは小隊で持ち場を離れ、ソルン隊は孤立して敵の攻撃を受け、李牧さん自身もカイネの危機を聞いて三千騎を率いて救援へ向かうという状況です。
これでは、趙軍が組織として残存秦軍の動きを監視し、迎撃態勢を維持しているのか、どうにも疑わしくなってきます。
まるで、趙軍全体が一度戦闘態勢を解除してしまったように見えるのです。
もちろん、実際に全軍の警戒態勢が解除されたとまでは断定できません。
ただ、各部隊が次の持ち場へ移動する一方で、残存秦軍への対応がおろそかになっているように見えるのは、かなり気になるところです。
そして、何より不思議なのが……。
秦軍を撃退したはずの趙軍の方が、なんだか逆に浮き足立っているように見えるんですよね。(汗)
邯鄲への攻撃を防いだことで、すでに勝利したつもりになっているのでしょうか。
あるいは、李牧さんが次の大一番を急ぐあまり、目の前に残っている飛信隊や楽華軍の脅威を軽視してしまっているのでしょうか。
いずれにせよ、今回のラストでは、その隙を突くかのように信がカイネの部隊の前に現れました。
しかも、李牧さん自身がカイネを救うため、予定していた北上ルートから外れて急行しています。
これでは、次の大一番に向かうどころか、再び飛信隊との戦闘に巻き込まれてしまう可能性すらあります。
李牧さん、王翦との決戦を考えるのは、せめて李信たちをどうにかしてからにした方がよかったんじゃないですかね??(汗)
少なくとも今回の展開を見る限り、趙軍が思っているほど、中央戦線の戦いは終わっていなかったようです。
考察ポイント② 李信がいきなり出現!? これ、李牧さんまで釣り出されていませんか?(汗)
さて、もう一つ気になるのが、今回のラストです。
なんで、いきなり飛信隊も李信も、こんなところまで肉薄しているんですか??
ソルン隊が敵軍と交戦しているという報告を受け、急遽救援に向かったカイネ。
そもそも敵の規模すら分かっていない状況だったわけですから、他の部隊との連携を優先するという選択肢もあったはずです。
しかし、カイネはソルン隊の全滅を防ぐため、本軍への合流を後回しにして救援へ向かいました。
いや、まあ、カイネだって予想していなかったでしょうけどね。
まさか、そこに李信本人が攻めてきているとは。(汗)
しかも、李信がいるということは、飛信隊の本軍級の戦力も近くに存在している可能性が高いわけです。
まさか、将軍である李信自ら、少人数の斥候部隊を率いて敵情偵察をしているなんてことは、普通に考えればないでしょう。
……ん?
いや、申し訳ありません。
蒙恬のために李信が斥候をやっているくらいなら、それは普通にあり得るか。(汗)
何しろ、李信ですからね。(笑)
ただ、今回の動きを見る限り、これが飛信隊単独の行動であるとも考えにくいです。
飛信隊、楽華軍、羌瘣軍が連携して再侵入している?
そもそも、前回の戦いで李信たちは一度撤退し、蒙恬や羌瘣も本軍側へ退いていたはずです。
であれば、今回の反撃も、当然ながら三者が連携して進めていると考えるのが自然でしょう。
飛信隊だけが勝手に突出している可能性もありますが、残存兵力を考えれば、楽華軍や羌瘣軍も何らかの形で作戦に参加しているのではないでしょうか。
そして、全体の指揮を執っているのは、やはり蒙恬でしょうか??
蒙恬の立場からしてみれば、一度撤退した自分たちを捜索するため、趙軍が広範囲に部隊を展開している状況は、むしろ反撃の好機にも見えるはずです。
趙軍が広く探索網を広げているということは、それだけ各部隊の距離が開いている可能性があります。
しかも、今回の趙軍は、すでに次の作戦行動に向けて移動を始めています。
李牧さんは北上中。
カイネも本軍への合流途中。
ソルン隊は中間地点に配置されていました。
つまり、各部隊が必ずしも一体となって行動しているわけではないのです。
これを見た蒙恬が、
「今なら、各個撃破できるかもしれない」
と考えたとしても、おかしくありません。
もしそうであれば、今回の李信による攻撃は、単なる河了貂の救出作戦にとどまらない可能性があります。
趙軍の部隊間の隙間を突き、孤立した部隊を次々に叩いていく。
そんな反撃作戦が、すでに始まっているのではないでしょうか。
李牧さん、三千騎だけで李信に近づくのは危険ですよ??
そして、ここで気になるのが李牧さんの行動です。
カイネが敵軍に包囲されていると聞くや、迷うことなく救援へ向かった李牧さん。
しかも、三千騎だけを率いて、全速力で現場に急行しています。
いや、李牧さん。
カイネが心配なのは分かりますけど……。
今、三千程度の手勢で、カイネを襲撃している李信に近づくのはさすがに危ないですよ。(汗)
もちろん、李牧さんの三千騎は雁門騎馬隊を中心とする精鋭でしょう。
しかし、相手はあの李信です。
しかも、飛信隊のどれほどの兵力が近くにいるのかも分かりません。
さらに、楽華軍や羌瘣軍まで連携しているとすれば、李牧さんが救援に向かった先で、逆に秦軍の包囲を受ける危険性すらあります。
そもそも、李信がカイネを発見できたことには、偶然の要素もあったのでしょう。
カイネ自身、河了貂の件で持ち場を離れていたわけですから、秦軍側が最初からカイネの居場所を把握していたとは限りません。
しかし、それにしても気になるのは、飛信隊の再侵入があまりにも早いことです。
邯鄲への攻撃に失敗して撤退したばかりなのに、もう趙軍の中間展開部隊を攻撃しているわけです。
しかも、その侵入は比較的早い段階で趙軍の物見に発見されています。
となると、いくつか考えられる展開があります。
李信は囮なのか? それとも三軍同時侵入なのか?
一つは、李信が先行軍、あるいは囮として突出しており、その後方に楽華軍や羌瘣軍が控えているという展開です。
李信が敵軍と交戦して趙軍の注意を引きつけ、その間に蒙恬や羌瘣が別方向から攻撃する。
これは十分に考えられます。
もう一つは、飛信隊、楽華軍、羌瘣軍がそれぞれ別の経路から、並列的に趙軍の配置へ侵入しているという展開です。
こちらの場合、趙軍の複数の部隊が同時に攻撃を受けることになります。
趙軍の探索網が広がりすぎているのであれば、その隙間を各軍が突破し、分散した部隊を攻撃することも可能でしょう。
いずれにせよ、現段階では李信の部隊規模も、他の秦軍の位置も判明していません。
ですから、飛信隊の行動が計画的な誘引作戦だったとまでは断定できません。
しかし、結果だけを見ると……。
カイネが釣れて、さらに李牧さんまで釣り出されているんですよね。(汗)
これは、秦軍にとって相当大きな戦果につながる可能性があります。
本来、北上して王翦との決戦に向かうはずだった李牧さんが、三千騎を率いて予定外の戦場へ急行しているのです。
しかも、その目の前には李信がいる。
仮に蒙恬が最初からこの展開を計算していたのなら、とんでもない誘引作戦が成功していることになります。
もちろん、単なる偶然の連続という可能性もあります。
ただ、偶然だとしても、結果的にはものすごい効果を発揮している侵入作戦です。
李牧さんが発見されたら、秦趙戦争が終わってしまうかも??
そして、もう一つ。
これは今回、最も危険な展開かもしれません。
もし李信たちが、救援に駆けつけた李牧さん本人の存在に気づいたら、どうなるのでしょうか。
李牧さんは現在、わずか三千騎を率いて前進しています。
しかも、カイネの救援を急ぐあまり、雁門騎馬隊すら追いつけないほどの速度で先行していました。
そんな李牧さんが、飛信隊の攻撃範囲に入ってしまったら……。
さらに、万が一です。
今回の飛信隊に、弓矢兄弟や昂クンが随伴していたらどうなるんですか??
李牧さんの姿を発見した瞬間、弓矢兄弟が遠距離から射撃を開始。
そして、昂クンが例の圧倒的な雄力を解放してしまったら……。
もう、秦趙戦争、ここで終結してしまいますよ。
特に昂クンの存在は危険です。
趙軍がどれほど精鋭を揃えていようとも、あの昂クンが本気を出してしまったら、李牧さんの三千騎がどうなるのか、まったく予想がつきません。
……いや、予想がつかないというより、惨劇が始まるだけかもしれませんが。
追い詰められたカイネ、突然の関西弁で李信と交渉開始!?
さて、そうなると、次回はカイネ自身もかなり危険な立場に置かれることになります。
何しろ、目の前には李信がいるわけです。
カイネも将軍とはいえ、李信との直接対決になれば、武力的には相当厳しいでしょう。
そして、万が一、李信に圧倒され、もう逃げ場がないという状況になったら……。
武力で劣るカイネが、ここで突然、コミュニケーション能力を発揮して、危機を切り抜けるという展開も予想できます。
カイネ「あー、ゴメン! ちょっと待って! カリョウテンの居場所教えっから、勘弁してーや??」
李信「……あ?」
カイネ「いや、もともとウチな? あの趙忽いうオッサン嫌いやってん」
李信「は??」
カイネ「そもそもウチ、カリョウテン助けようとしたんやで? でもな、ウチの立場やと、さすがに牢から逃がすわけにはいかへんやん?」
李信「お、おう……?」
カイネ「せやから、あんたが自分で助けに行ったらええんと違う??」
李信「えっ?」
カイネ「ウチはな、李牧様とシッポリできたら、それでええねん。別にカリョウテン殺したいわけちゃうし」
李信「え、ええ、あ、うん??」
カイネ「ほな、これで話まとまったな! あんたはカリョウテン助ける。ウチは李牧様のとこ帰る。お互いWin-Winや!」
李信「お、おう……そうなのか?」
カイネ「そうや! ほな、そういうことで! おおきに!!」
李信「……??」
………というわけで、追い詰められたカイネが、突然「大阪で生まれた女」になって、李信とのWin-Winの関係を求め始める展開です。
いや、実際のところ、カイネは河了貂を救おうとしていたわけですから、李信にその事情を伝えれば、少なくとも話し合いの余地くらいはあるはずなんですよね。
問題は、李信がそんな説明を素直に信じるかどうかですが……。
……いや。
李信なら、普通に信じそうじゃないですか??(笑)
というわけで、今回の考察を締めくくりましょう。
次回、キングダム第894話。
「素直すぎる李信」
その後、戦場から帰還した李信。
カイネとの交渉がうまくいったことを、意気揚々と蒙恬に報告します。
李信「いやー、助かったぜ! カイネの奴、貂の居場所を教えてくれたんだよ!」
蒙恬「……は?」
李信「なんか、李牧とシッポリできればそれでいいんだとよ。だから、もう戦わなくていいって話になってな!」
蒙恬「…………。」
蒙恬「え、ええーーーーーーーっ!? もしかしてお前、それで目の前の李牧逃がしたんか!?」
李信「ファッ!?」
羌瘣「駄目だこりゃ。」
次回もお楽しみに!!(笑)
お楽しみに!!