飛信隊、完全包囲――絶望の戦場
今週の『キングダム』は、まさに絶望という言葉がふさわしい回でした。
前話で飛信隊は、邯鄲攻略の最中に背後を突かれ、退路を断たれるという最悪の状況に追い込まれました。
そして第879話では、その窮地がさらに深刻化していきます。
信の動揺と飛信隊の覚悟
背後から押し寄せる趙軍を前に、信は矛を構えます。
しかし、その前に飛び出したのは飛信隊の兵士たちでした。
大将である信を守るため、自ら盾となる隊員たち。
それでも勢いづく趙兵の猛攻は止まらず、次々と飛信隊の兵が討たれていきます。
そんな中、信は一瞬だけ気持ちが折れかけていました。
その信を叱咤したのが河了貂です。
「お前があきらめなければ、みんなあきらめない」
飛信隊は信という将を中心に成り立っている軍です。
隊員たちは信に命を預け、同じ道を歩いてきました。
だからこそ、信が負けを認めれば飛信隊も終わる。
河了貂の言葉は、軍師としてだけでなく、長年信と共に歩んできた仲間だからこそ言えた言葉だったのでしょう。
信もそれを受け止めます。
「少しぼーっとしちまった」
そう認めた上で、いつもの飛信隊らしく最後まで足掻くことを決意します。
飛信隊の恐ろしさ
信が立ち直ると、飛信隊は即座に動きます。
各所で兵士たちが倒れた味方や馬の亡骸を利用し、防壁を構築。
時間を稼ぎながら再編成を図ろうとします。
興味深いのは、この動きが本陣からの指示ではないことです。
各隊が独自判断で同じ結論に到達している。
これを見た琉安も、
「恐ろしい軍だな 飛信隊」
と評しています。
長年の実戦を経て、飛信隊全体に「どう戦うべきか」が浸透していることが分かる描写でした。
河了貂の最後の賭け
一方で河了貂は必死に突破口を探します。
高所から敵軍を確認させますが、見渡す限り趙軍。
逃げ道は見当たりません。
羌瘣軍も救援に向かっているものの、逆に包囲攻撃を受けている状況。
それでも河了貂は思考を止めません。
左か。
右か。
羌瘣との合流か。
一点突破か。
考え抜いた末にたどり着いた結論が、
飛信隊全軍を集中させた一点突破。
そして彼女は、この策が成立する理由を一つ見出します。
李牧さん唯一の欠点
河了貂が見出した希望。
それは、
「李牧さんは王都軍を使えない」
という前提でした。
趙王室と李牧さんの関係は決して良好ではありません。
そのため、邯鄲城を背負って戦う現在の状況でも、背後から王都軍が出てくることはない。
河了貂はそう判断します。
完璧に見える李牧さんにも唯一の欠点がある。
そこを突けば活路が開ける。
そう考えた瞬間でした。
閉ざされていた門が開く
邯鄲城側から轟音が響きます。
そして閉ざされていたはずの門が開門。
現れたのは、
公孫龍率いる王都軍。
さらに衝撃なのは、その行動が李牧さんの指示によるものだったことです。
李牧さんはあらかじめ、
「第二防衛線を突破された場合は王都軍を出し、とどめを刺せ」
という密命を公孫龍へ伝えていました。
つまり、飛信隊が第二防衛線を突破した段階で、既にこの展開まで読んでいたことになります。
完全包囲の完成
王都軍は備えのない飛信隊の背後へ突撃。
後方の防壁は瞬く間に崩壊します。
前方には李牧さん率いる趙軍。
後方には王都軍。
左右にも逃げ場はありません。
まさに完全包囲。
河了貂は打つ手を失い、
「みんな・・・ごめん・・・」
と涙を流します。
今回のラストは、飛信隊史上でも屈指の絶望感だったのではないでしょうか。
今後の考察
もちろん史実を考えれば、ここで信が討たれることはありません。
問題は「どう生き残るか」です。
現状で考えられる可能性としては、
① 羌瘣軍との合流
最も可能性が高いルートです。
ただし羌瘣軍も既に包囲を受けており、状況は厳しいままです。
② 楽華軍の介入
蒙恬が李牧さんの想定外の動きを見せる可能性があります。
知略で李牧さんに対抗できる数少ない将だけに、今後の動きは注目です。
③ 想定外の援軍
可能性は低いものの、作者が大逆転を描くならこのルートでしょう。
もっとも、現状ではかなり苦しいと言わざるを得ません。
たった、一人の雄を除いては…。
気になる王都軍出陣問題
もう一つ見逃せないのが、
王都軍を動かした件です。
今回の描写を見る限り、公孫龍以外には知らされていない極秘作戦でした。
仮に趙王の正式な許可を得ていなかった場合、
戦後に李牧さんと王室の対立がさらに深まる可能性があります。
目先の勝利と引き換えに、新たな火種を抱え込んだとも言えるでしょう。
今回最大のツッコミどころ
ここまでやって負ける李牧さん、大丈夫なのか?
正直なところ、今週の879話を読んでいて真っ先に思ったことがあります。
それは、
「いや、李牧さん、ここまでお膳立てやってもらって、また負けるのか?」
という点です。
今回の状況を整理してみましょう。
- 第二防衛線で迎撃
- 飛信隊を意図的に邯鄲前まで誘導
- 背後から追撃軍を投入
- 前方には本軍を配置
- 王都軍まで秘密裏に出陣
- 飛信隊を完全包囲
もはや戦術的には満点に近い状況です。
飛信隊からすれば、
「どうやって生き残るんだ?」
というレベルですが、
逆に言えば、
李牧さんから見れば、ここで仕留められなければ、逆に、無能過ぎて、完全におかしい状況です。
むしろ失敗した時のダメージが大きい
問題はここです。
キングダム読者は知っています。
李牧さんは最終的に秦を止められません。
史実でも趙は滅亡します。
つまり、
どこかで李牧さんは失敗する。
それは確定事項です。
しかし今回のように、
飛信隊をここまで完璧に追い詰めてしまうと、
逆に作者自身が逃げ道を失うことになります。
例えば、
飛信隊がギリギリ突破しました。
なら、
「ここまで包囲して何故逃がした?」
になります。
羌瘣が助けました。
なら、
「それを警戒していなかったのか?」
になります。
蒙恬が助けました。
なら、
「李牧さんの包囲網はそんなに穴だらけだったのか?」
になります。
李牧さんの評価が下がる危険性
本来、名将の敗北というものは、
「そこまでやったなら仕方ない」
というラインがあります。
例えば王騎将軍。
例えば廉頗。
例えば桓騎。
彼らは負けても、
「相手も強かった」とか、
「状況が無理ゲー過ぎた」などで終われます。
しかし今回の李牧さんは違います。
作者が、
「完全包囲」
「逃げ場なし」
「絶体絶命」
を何週にも渡って積み重ねています。
ここで飛信隊を逃がした場合、
読者から見れば、
ここまで有利な状況で何故負ける??
という疑問が必ず生まきます。
作者は自らハードルを上げてしまった
今回の879話で気になったのは、
飛信隊の絶望ではありません。
むしろ、
作者が李牧さんに背負わせたハードルです。
ここまで完璧な包囲戦を描いた以上、
読者は当然、
「じゃあ飛信隊どうやって助かるの?」
と考えます。
そして救出方法が強引になればなるほど、
今度は李牧さんの評価が下がってしまう。
つまり現在のキングダムは、
飛信隊ではなく、
作者自身が難しい局面に立たされているようにも見えます。
総評
今週の879話は確かに絶望感の演出としては成功しています。
しかし同時に、
「ここまでやって負ける李牧さん問題」
という新たな論点も生まれてしまいました。
歴史的に敗北が確定している人物である以上、
強く描けば描くほど、
後の敗北理由に説得力が必要になります。
果たして原先生は、
この巨大な包囲網をどう崩し、
そして李牧さんの格を落とさずに敗北へ繋げるのか。
今後の展開で最も注目すべき点は、そこかもしれません。
しかし、当ブログの読者様は、全員お気づきのことでしょう。
そんな、李牧さんのメンツを守る、たった一つの方法
正直なところ筆者には一つしか解決策が思い浮かびません。
それは、
昂クン投入です。
もうこれしかありません。